対称条件を使って有限要素法(FEM)の解析規模を削減しよう!

zairiki
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FEM(有限要素法)で解析するとき、形状や境界条件に対称性がある場合、全体をモデル化せずに一部分だけを計算することで計算コストを大幅に削減できます。この記事では、対称条件を使って解析規模を1/2・1/4・1/8などに縮小する方法を例を示しながら解説します。

この記事はYoutube動画で紹介した内容の概要です。詳細は動画をご覧ください。

1. 対称条件を使うメリット

穴のある板を上下に引張る問題では、変形や応力分布が上下・左右で対称になります。この場合、板全体をFEMで計算しなくても、全体の1/4形状を計算するだけで全体の変形や応力が求まります。要素数が約1/4になるので、計算時間やメモリなどの計算コストを大幅に削減できます。FEMでは要素数が多いほど計算コストが増加するため、対称条件の活用は非常に効果的です。

対称条件の変形や応力。左:穴のある板(上下に引張荷重)。右:1/4モデルの応力分布(引張方向)。「全体の計算をしなくても全体の変形や応力が求まる」という紫のバナーが表示されている。
対称条件の活用。穴のある板の 1/4 モデルだけを計算すれば、全体の変形・応力が求まる。計算コストを大幅に削減できる。

2. 例①:xyz方向すべてで対称 → 1/8モデル

穴のある板がxyz 3方向すべてに対称な形状で、荷重もxyz方向すべてに対称な場合、全体の1/8形状を抜き出して計算すれば、全体の変形・応力が求まります。ただし、1/8形状であることを表す対称境界条件を設定する必要があります。各対称面では、その面に垂直な方向の変位を拘束します(例:x方向対称面 → x方向変位を拘束)。また、荷重を与える面の面積は全体の1/4になるので、全体荷重の1/4を与えます。

対称条件の例①。xyz3方向に対称な穴のある板(左・全体形状)から、全体の1/8形状(右)を抜き出す矢印図。1/8形状は滑らかな台形状の薄い板で穴の1/8が切り出されている。
例①:xyz 3方向すべてに対称な板。全体の 1/8 形状を抜き出し、各対称面に境界条件を設定することで全体の計算結果が得られる。

3. 例②:z方向が非対称(片面リブあり)→ 1/4モデル

板の片面だけにリブがある場合、xy方向には対称でも、厚さ方向(z方向)には対称ではありません。この場合は1/8モデルは使えませんが、xy方向の対称性だけを活用して全体の1/4形状で計算できます。z方向には対称境界条件を設定せず、z方向の剛体変形を止めるために適切な点の変位を拘束します。

対称条件の例②。穴の周囲にリブがある板(片面のみ・左)から全体の1/4形状(右)を抜き出す矢印図。1/4形状には穴周辺のリブが含まれた厚みのある形状が示されている。
例②:片面にリブがある板はz方向非対称のため 1/4 モデルを使う。xy 方向の対称境界条件を設定し、z 方向の剛体変形も止める。

4. 例③:x方向のみ対称(穴位置がずれている)→ 1/2モデル

穴のy方向位置が板の中央からずれていてy方向に非対称で、かつ片面リブがあってz方向も非対称な場合は、x方向の対称性だけを活用して全体の1/2形状で計算します。対称条件がひとつだけでも、モデルサイズを半分に削減できます。

対称条件の例③。穴位置がy方向中央からずれて片面リブがある板(左)から全体の1/2形状(右)を抜き出す矢印図。1/2形状はx方向に切断した半分の板。
例③:穴位置がずれてy方向非対称・z方向非対称の板は 1/2 モデルを使う。x 方向の対称性だけを活用する。

5. 例④:軸対称 → 2次元問題として扱う

円板の外周全体に中心方向の面圧が作用する場合、形状・荷重ともに軸対称です。この場合は2次元軸対称条件を使って、中心軸から外周までの断面(2次元モデル)だけを計算できます。3次元問題を2次元に落とすことで計算コストを飛躍的に削減できます。

対称条件の例④。外周に面圧(中心向き矢印)が作用する円板(左・3次元)から、中心軸から外周までの断面(右・2次元軸対称モデル)への変換を示す矢印図。「2次元軸対称」と書かれた緑の矢印。
例④:軸対称の円板は 2 次元軸対称問題として扱える。3 次元問題を 2 次元の断面計算に落とすことで計算コストを大幅に削減できる。

6. 注意点:形状と境界条件の両方が対称でないとNG

対称条件を使うには、形状と境界条件(荷重・固定など)の両方が対称である必要があります。形状が左右対称な板でも、荷重が非対称な場合は対称条件を活用できません。一見対称に見えても、変形がどのように生じるかをよく考えて判断することが重要です。

注意点①。左:形状と境界条件が対称な板(上下から引張)。右:荷重が非対称な板(上から引張りつつ側面にも荷重)。形状が同じでも荷重が非対称なら対称条件を使えないことを比較で示す。
注意点①。形状が対称でも荷重(境界条件)が非対称な場合は対称条件を使えない。形状・境界条件の両方が対称であることが条件。

まとめ

まとめ。対称性を活用したFEMでは、形状・境界条件の対称性に応じて適切なモデルサイズと境界条件を設定する。
  • 形状や境界条件が対称の場合、全体を計算しなくても対称性に応じて1/2・1/4・1/8などの形状を計算するだけで全体の変形や応力が求まる。計算コストを大幅に削減できる。
  • 対称性を活用したFEMでは、対称面の垂直方向変位を拘束して対称境界条件を表す。荷重は対称モデルの断面積に合わせて調整し、剛体変形も忘れずに止める
  • 対称に使える方向が多いほど(3方向→1/8、2方向→1/4、1方向→1/2)モデルが小さくなる。軸対称なら2次元問題として扱える。
  • 形状と境界条件の両方が対称でないと非対称な問題になり、対称条件は使えない。ただし解析の目的によっては、非対称な条件でも対称性を活用したFEMが有効なケースもある。

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