一歩踏み込む材料力学の教室【中級編】
- 初級編「ここから始める!材料力学の教」を見終わった人向け
- このシリーズで材料力学の踏み込んだ内容を理解しよう!
FEMソフトの結果表示にデフォルトで設定されていることが多い応力として「ミーゼス相当応力」があります。多軸応力場を単軸応力と同じ基準で評価できる便利な指標ですが、使って良い場合と悪い場合があります。この記事ではミーゼス相当応力の定義・特徴・使い方の注意点を説明します。
この記事はYoutube動画で紹介した内容の概要です。演習問題を含む詳細は動画をご覧ください。
1. ミーゼス相当応力とは
材料試験(単軸引張)で得られる降伏応力や強度は、実製品では複数方向の垂直応力やせん断応力が同時に生じる「多軸応力場」になるため、そのまま適用することができません。
ミーゼス相当応力とは、多軸応力場のせん断ひずみエネルギーが単軸の応力と同じになるように換算した値で、単軸と多軸の応力場を同じ基準で評価できます。ミーゼス相当応力 σₘ は次の式で表されます。
σₘ = √{ [(σx−σy)² + (σy−σz)² + (σz−σx)²] / 2 + 3(τxy² + τyz² + τzx²) }
各垂直応力の差の2乗と、各せん断応力の2乗を組み合わせた式です。主応力 σ₁, σ₂, σ₃ を使って表すこともできます。
ミーゼス相当応力の定義式。各垂直応力の差の2乗と、各せん断応力の2乗を用いて多軸応力場を単一のスカラー値に変換する。
2. 特徴と使い方の注意点
ミーゼス相当応力には以下の特徴があります。
- 常に正のスカラー値:方向の情報を持たず、位置で決まる値。各応力成分を2乗してルートをとるため、常に正になる。
- 引張と圧縮を区別しない:圧縮応力が生じる場合でも正の値になるため、引張場か圧縮場かを区別できない。
- 静水圧成分は反映されない:全方向に同じ大きさの垂直応力(静水圧)が作用するとき、式中の差の項がすべて0になり、ミーゼス相当応力は0になる。
これらの特徴から、ミーゼス相当応力を使って良い場合と悪い場合があります。
ミーゼス相当応力の使って良い例(○)と悪い例(×)。延性材料の降伏判定には適するが、脆性破壊・界面剥離など方向性のある現象の判定には不適。
まとめ
ミーゼス相当応力のまとめ。定義・式・特徴・使い方の注意点を整理したスライド。
- ミーゼス相当応力とは、多軸応力場のせん断ひずみエネルギーが単軸の応力と同じになるように変換した値。単軸と多軸の応力場を同じ基準で評価できる。
- 常に正のスカラー値で、引張と圧縮を区別しない。全方向に同じ応力(静水圧)が作用するとき、静水圧成分は反映されず0になる。
- 延性材料の降伏判定に適している。脆性材料の破壊判定(→主応力を使う)や界面剥離など方向性のある現象の判定には不適。
より詳細な説明や演習問題をYouTube動画で紹介しています。ぜひご覧ください。
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