座屈とは?急に違う変形をする現象を知ろう!
- これから材料力学を勉強したい人や復習したい人向け
- このシリーズで材料力学の基礎を理解しよう!
材料力学の教室・第13回です。細長い柱に圧縮荷重をかけていくと、ある瞬間に突然大きく横に曲がることがあります。この現象を 座屈 といいます。今回は座屈が生じるしくみや、設計で使われる オイラーの座屈荷重 の式を紹介します。演習問題で計算も練習しましょう。
この記事はYoutube動画で紹介した内容の概要です。詳細は動画をご覧ください。
1. 座屈とは何か
細長い棒を引張ると、棒は素直に伸びます。ところが 圧縮荷重 をかけると、はじめは真っすぐに縮むだけですが、荷重がある大きさに達すると 突然大きく曲がる ことがあります。
このように、部材に荷重をかけていくと急に異なる変形が生じる現象を 座屈 といいます。身近な例では、プラスチックの定規を上下から押さえてビヨンビヨンと変形させる、あの現象が座屈です。

2. 座屈が生じるしくみ ― 荷重-変位関係の分岐
同じ柱でも、圧縮変形と曲げ変形では 荷重と変位の関係が異なります。
- 圧縮変形:変位が増えるほど荷重も増加(弾性なら線形)
- 曲げ変形:変形が大きいほど必要な荷重は小さくなる(右下がり)
荷重を徐々に増やしていくと、ある点でこの2つの荷重-変位曲線が交差します。この 分岐点 を超えると、エネルギーの小さい曲げ変形側の曲線に移行し、座屈が発生します。この分岐点における荷重が 座屈荷重 です。

3. オイラーの座屈荷重
弾性変形の範囲で座屈が生じるときの荷重を見積もる式が オイラーの座屈荷重 です。

各変数の意味:
- n:端末条件係数(端部の拘束状態で決まる)
- E:縦弾性係数(材料で決まる)
- I:断面二次モーメント(断面形状で決まる)
- L:柱の長さ
式を見ると、I が大きいほど・L が短いほど 座屈荷重が大きく(座屈しにくく)なることが分かります。
端末条件係数 n の値
柱の両端がどのように支持されているかによって n が決まります。

| 端部の条件 | 端末条件係数 n |
|---|---|
| 両端ともに位置・角度を固定(両端固定) | 4.0 |
| 両端ともに位置固定・回転自由(両端ピン) | 1.0 |
| 片端は位置・角度固定、もう片端は自由(片持ち) | 0.25 |
端部の拘束が強いほど n が大きく、同じ柱でも座屈荷重が高くなります。
4. 演習問題1:座屈方向と座屈荷重
問題:長さ 1000 mm、断面 10 mm × 50 mm(長方形)の柱に、上下端を固定して圧縮荷重をかける。縦弾性係数 E = 200 GPa のとき、(1) 座屈が生じる方向はどちらか、(2) オイラーの座屈荷重はいくつか。
(1) 座屈が生じる方向
オイラーの座屈荷重は断面二次モーメント I に比例するため、I が小さい方向に先に座屈します。幅 b・高さ h の長方形断面の断面二次モーメント I = bh³/12 を2方向について計算すると:
- 幅 10 mm 側に曲がる方向(高さ 10 mm として計算):I = 50 × 10³ / 12 ≒ 4167 mm⁴
- 幅 50 mm 側に曲がる方向(高さ 50 mm として計算):I = 10 × 50³ / 12 ≒ 104167 mm⁴
I が小さいのは 幅 10 mm 側に曲がる方向 なので、こちらに座屈します。

(2) オイラーの座屈荷重
両端固定なので n = 4.0。座屈する方向の I = 4167 mm⁴ を使って計算します。

5. 演習問題2:柱の長さを2倍にしたとき
問題:演習問題1と同じ柱で、長さを 1000 mm から 2000 mm に変更したとき、オイラーの座屈荷重はいくつになるか。
解答:オイラーの座屈荷重は長さ L の2乗に 反比例 します。長さが2倍になると L² は4倍になるため、座屈荷重は 1/4 に低下します。

座屈を防ぐには、柱を短くする(ブレースや中間支持を設ける)か、断面二次モーメントを大きくする(断面を太くする、またはI形・H形断面にする)のが有効です。東京スカイツリーや東京タワーのトラス構造では、圧縮を受ける柱を短くなるよう設計することで座屈を防いでいます。
まとめ
- 座屈とは、部材に荷重をかけていくと急に異なる変形が生じる現象。圧縮荷重がある大きさ(座屈荷重)に達すると、突然大きな曲げ変形が生じる。
- 座屈が生じるしくみ:圧縮変形と曲げ変形の荷重-変位曲線が分岐点で交差し、エネルギーの小さい側(曲げ変形)へ移行することで起きる(分岐座屈)。
- オイラーの座屈荷重:Pcr = nπ²EI / L²。端末条件係数 n・縦弾性係数 E・断面二次モーメント I・柱の長さ L で決まる。
- 端末条件係数 n:両端固定 = 4.0 / 両端ピン = 1.0 / 片端固定+片端自由 = 0.25。
- 長方形断面では I が小さい方向に先に座屈する。Pcr は L の2乗に反比例するため、柱が長くなるほど急激に座屈荷重が低下する。
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