熱変形とは?熱ひずみや線膨張係数を使いこなそう!

zairiki
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「材料力学の教室【初級編】」の第6回です。今回は熱変形を扱います。熱ひずみの定義と、その大きさを決める材料定数線膨張係数を説明します。実際に計算する演習問題も扱います。

この記事はYoutube動画で紹介した内容の概要です。詳細は動画をご覧ください。

1. 熱変形とは

部材は温度が上昇すると膨張し、温度が低下すると収縮します。このように、温度変化によって寸法が変わることを熱変形と言います。

温度上昇で膨張、温度低下で収縮
温度上昇 → 膨張、温度低下 → 収縮

2. 身の回りの熱変形

例1:鉄道のレール

夏の暑い日にレールが曲がって電車が止まるというニュースを聞くことがありますね。レールはもともと熱変形を見越して隣のレールとの間に隙間が設けられていますが、想定以上に温度が上昇してレールが膨張すると、隙間がなくなって行き場を失った膨張分がレールを座屈させて曲げてしまうという現象です。

レールの熱変形による曲がり
暑い日のレール曲がりは、膨張の行き場がなくなることで起きる

例2:瓶のフタ

開けにくい瓶のフタも、フタを温めると開けやすくなります。これはフタが膨張して、瓶本体との間に隙間ができるためです。熱変形は身の回りでこのように悪い形でも、便利な形でも現れます。

瓶のフタを温めると開けやすくなる
フタを温めると膨張して本体との間に隙間ができる

3. 熱ひずみと線膨張係数

温度変化で生じる変位を元の長さで割った値熱ひずみと言います。定義の形は前回までに学んだ「荷重によるひずみ」とまったく同じで、原因が荷重ではなく温度変化である点だけが違います。

熱ひずみ ε は、温度変化量 ΔT に比例します。比例係数を α とすると、

ε = α × ΔT

この比例係数α線膨張係数で、材料で決まる物性値です。

熱ひずみ ε = αΔT と線膨張係数
熱ひずみ ε = α × ΔT。α は線膨張係数(材料で決まる)

熱ひずみにはもう一つ大切な特徴があります。荷重によるひずみと違って、熱ひずみが生じても応力は生じません(部材が自由に膨張・収縮できるとき)。応力が生じるのは、熱変形が拘束されたときだけです。

4. 線膨張係数の値(材料による違い)

線膨張係数の単位は一般に×10⁻⁶/℃で表されます。1 ℃ 上昇したときに 10⁻⁶ のひずみが生じる材料の α が「1」です。代表的な材料の値はざっと次のようになります。

  • セラミックス:おおむね10×10⁻⁶/℃以下(アルミナ 約7、シリコン 約3、ガラス 約8)
  • 金属:鉄 約12、アルミ 約23
  • 樹脂:エポキシ 約50、テフロン 約100
  • ゴム:シリコーンゴム 約300
  • その他:コンクリート 約12

ざっくりセラミックス < 金属 < 樹脂 < ゴムの順に大きくなる、と覚えておくとよいです。

材料別の線膨張係数
線膨張係数は材料によって大きく異なる(×10⁻⁶/℃)

ここに挙げた数値は目安です。樹脂はフィラーや繊維を入れると線膨張係数が大きく変わるなど、同じ「樹脂」でも値が幅広く変動します。実際に使用する材料が決まったら必ず線膨張係数を確認してください。

5. 演習:熱変形を計算する

演習問題1:アルミの角棒の熱膨張

問題:高さ100 mm、断面1辺10 mmのアルミ角棒(α=23×10⁻⁶/℃)を0 ℃ → 100 ℃に温度上昇させたとき、寸法はどう変化するでしょうか?

解答:まず熱ひずみは、

ε = α × ΔT = 23×10⁻⁶ × 100 = 23×10⁻⁴

熱ひずみは等方性の材料ではすべての方向に同じ大きさで生じるので、高さ・断面1辺の変化はそれぞれ「元の長さ × ε」で求まります。

  • 高さの増加 = 100 mm × 23×10⁻⁴ = 0.23 mm
  • 断面1辺の増加 = 10 mm × 23×10⁻⁴ = 0.023 mm
演習問題1の答え アルミ角棒の熱膨張
演習問題1の答え:高さは0.23 mm、断面1辺は0.023 mm増加

演習問題2:東京スカイツリーの夏冬での高さの差

問題:高さ634 mの東京スカイツリーは、真夏(40 ℃)と真冬(0 ℃)でどのくらい高さが違うでしょうか? ツリーの材料は線膨張係数 12×10⁻⁶/℃ の鉄として、温度は全体一様とします。

解答:熱ひずみは、

ε = α × ΔT = 12×10⁻⁶ × 40 = 4.8×10⁻⁴

高さの変化は元の長さ × 熱ひずみなので、

634 m × 4.8×10⁻⁴ ≒ 0.30 m

つまり、夏と冬で30 cm(ものさし1本分)も高さが違うことになります。

演習問題2の答え スカイツリーの熱変形
スカイツリーは夏と冬で約 30 cm 高さが変わる

身近なものに当てはめてみると、線膨張係数 10⁻⁶/℃ という数字が体感的にイメージしやすくなりますね。

まとめ

  • 部材は温度上昇で膨張、温度低下で収縮する。これを熱変形と言う。
  • 熱変形によるひずみが熱ひずみ。等方性の材料ではすべての方向に同じ大きさで生じる
  • 熱ひずみはε = α × ΔT。比例係数 α が線膨張係数(材料で決まる物性値)。
  • α の大小はおおむねセラミックス < 金属 < 樹脂 < ゴムの順。
  • 部材が自由に変形できる条件下では、熱ひずみが生じても応力は生じない

このチャンネルでは、材料力学を学んだり生活に役立てるための様々なコンテンツを用意しています。Youtubeではさらに詳しく解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。

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