ポアソン比とは?荷重が無い方向のひずみや変位を求めよう!

zairiki
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「材料力学の教室【初級編】」の第5回です。今回はポアソン比を紹介します。ポアソン比を使うと、荷重がかかっていない方向のひずみや変位も求められるようになります。

この記事はYoutube動画で紹介した内容の概要です。詳細は動画をご覧ください。

1. 荷重方向と直交方向の変形

立方体の部材にx方向の引張荷重をかけると、x方向の寸法は増加し、それと直交するy方向・z方向の寸法は減少します。逆に圧縮荷重をかけると、x方向の寸法が減少し、y方向・z方向の寸法は増加します。

つまり、荷重方向と直交方向ではひずみの符号が逆になるという関係があります。これを表にまとめると、次のようになります。

荷重方向と直交方向のひずみ符号の関係
引張・圧縮どちらでも、荷重方向と直交方向でひずみの符号は逆になる

2. ポアソン比の定義

荷重方向(x方向)のひずみをεとしたとき、直交方向(y, z方向)に生じるひずみは−νεと表されます。マイナスがつくのは、先ほどのとおり荷重方向と直交方向でひずみの符号が逆になるためです。

このν(ニュー)がポアソン比です。荷重方向と直交方向のひずみの大きさの比を表す、材料で決まるパラメータです。

直交方向のひずみ = −ν × 荷重方向のひずみ

ポアソン比の定義 直交方向のひずみ = -νε
荷重方向のひずみ ε に対して、直交方向のひずみは −νε

ポアソン比 ν の理論的な範囲は−1 ~ 0.5ですが、負になる材料は非常に少なく、一般には 0 ~ 0.5の範囲に入ります。

3. 変形後の形状とポアソン比 ν=0.5 の特殊性

1辺が単位長さ(=1)の立方体に引張荷重をかけて、荷重方向にひずみ ε が生じた場合を考えます。

  • 荷重方向の辺の長さは 1 + ε
  • 直交2方向の辺の長さは 1 − νε
変形後の形状 1+ε, 1-νε
引張荷重を受けた立方体の変形後の各辺の長さ

このとき、変形後の体積は (1−ε)(1+νε)² のように 3辺の積で表されます。εは1より十分小さいのでε²、ε³を無視して展開すると、おおよそ 1 − (1 − 2ν)ε となります。

この式から、ν = 0.5 のとき (1 − 2ν)ε の項が 0 になり、変形しても体積が変わらないことが分かります。

ν=0.5 体積変化なしの条件
ν=0.5 は「体積変化なし」の特殊な条件

ν=0.5 の材料を、枠などで囲んで体積が変われない条件で変形させようとすると、剛性が非常に大きくなります。なお、CAEで応力解析をする際、ν=0.5 を直接入れるとエラーになるソフトが多いため、ゴム・ゲルなどはν=0.49のように 0.5に近い値を入れることが多いです。

4. 材料ごとのポアソン比

代表的な材料のポアソン比は、おおむね次のような範囲に分布します。

  • 金属・樹脂:0.3 付近(多くは 0.2 ~ 0.4 の範囲)
  • ゴム・ゲル:0.5 付近(体積変化が小さい)
  • コルクなど:0 付近(直交方向の寸法変化が小さい)
  • ν が負:特殊な材料のみ(数は非常に少ない)
材料別のポアソン比
金属・樹脂は約0.3、ゴム・ゲルは約0.5、コルクは約0

ポアソン比が0 や 0.5 に近い材料の変形・応力を計算するときは、ν の値が結果に与える影響が大きいので、特に注意してください。

5. 演習:ポアソン比を使ってみる

演習問題1:圧縮された角棒の断面寸法

問題:断面1辺10 mm、長さ100 mmの正方形角棒(ν=0.3)に圧縮荷重をかけたところ、長さが100 mm → 99 mmに変化しました。変形後の断面の1辺はいくつになるでしょうか?

解答:まず荷重方向(z方向)のひずみは、

εz = (99 − 100) / 100 = −0.01

直交方向(x, y方向)のひずみは、−νεz なので、

εx = εy = −0.3 × (−0.01) = 0.003

断面1辺の増加量は ε × 元の長さ = 0.003 × 10 = 0.03 mm。よって変形後は1辺 10.03 mmの正方形になります。

演習問題1の答え 1辺10.03mm
演習問題1の答え:圧縮で長さは縮み、断面はわずかに膨らむ

演習問題2:引張られた丸棒の長さと直径

問題:長さ100 mm、直径5 mmの丸棒(E=3 GPa、ν=0.3)に200 Nの引張荷重をかけました。変形後の長さと直径はいくつでしょうか?

解答:まず荷重方向の応力は、

σz = 200 N / (π × 2.5² mm²) ≒ 10.2 MPa

フックの法則 ε = σ/E より、荷重方向のひずみは、

εz = 10.2 MPa / 3,000 MPa ≒ 0.0034

長さの増加量は 0.0034 × 100 = 0.34 mm。直径方向のひずみは、

εr = −νεz = −0.3 × 0.0034 ≒ −0.0010

直径の増加量は −0.0010 × 5 = −0.005 mm。よって、

  • 長さ:100 mm → 100.34 mm
  • 直径:5 mm → 4.995 mm
演習問題2の答え 長さ100.34mm 直径4.995mm
演習問題2の答え:引張で長さは伸び、直径は少し細くなる

このように、ポアソン比を使うと荷重がかかっていない方向のひずみや変位も求められます。

まとめ

  • 引張・圧縮どちらでも、荷重方向と直交方向でひずみの符号は逆になる。
  • 荷重方向のひずみを ε とすると、直交方向のひずみは −νε。この ν をポアソン比と言う。
  • ポアソン比の理論範囲は−1 ~ 0.5。一般の材料では 0 ~ 0.5 に収まる。
  • 金属・樹脂は約 0.3、ゴム・ゲルは約 0.5、コルクなどは約 0。ν=0.5 は体積変化なしの特殊条件。
  • ポアソン比を使えば、荷重がかかっていない方向のひずみや変位も計算できる。

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