断面二次モーメントとは?梁の曲げ易さや曲げ難さを表そう!

zairiki
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「材料力学の教室【初級編】」の第10回です。前回のたわみの微分方程式 d²y/dx² = M/(EI) に出てきたI(断面二次モーメント)の説明です。一般式の意味や長方形断面の公式 I = bh³/12を説明します。実際に計算する演習問題も扱います。

この記事はYoutube動画で紹介した内容の概要です。詳細は動画をご覧ください。

1. 断面二次モーメントの役割

梁の曲げ変形によるたわみ y は、たわみの微分方程式によって決まります。

d²y / dx² = M / ( E I )

  • M:曲げモーメント = 梁にかかる負荷で決まる
  • E:縦弾性係数 = 材料で決まる
  • I:断面二次モーメント = 断面形状で決まる
たわみの微分方程式におけるI
d²y/dx² = M/(EI) の I が断面二次モーメント。断面形状の効果を表す

つまり、断面二次モーメントは「梁の曲げにくさ」のうち断面形状で決まる部分を表す量です。値が大きいほど、その断面は曲がりにくくなります。

同じ板でも向きで曲がりやすさが違う
同じ板でも、立てて使うか寝かせて使うかで断面二次モーメントが変わり、曲がりやすさがガラッと変わる

2. 断面二次モーメントの求め方(一般式)

梁の長さ方向を x、高さ方向を y、奥行き方向を z とし、断面の図心(図形の中心、均一材料なら重心)を原点にとります。z軸まわりに曲げる場合、断面二次モーメント Iz は次の式で求まります。

Iz = ∫ y² dA (断面全体で積分)

断面二次モーメントの一般式 Iz=∫y²dA
断面二次モーメント Iz = ∫ y² dA(図心まわりに、各微小領域 dA に対して y² を掛けて積分)

なぜ y² なのか? モーメント=力×距離。曲げ応力は図心からの距離 y に線形に増えるので、力(応力×面積)も y に比例して増えます。これに距離 y を掛けるので、結果としてを断面全体で積分する形になります。

3. 長方形断面の公式:I = bh³/12

b、高さ h の長方形断面について、図心を原点にとって積分してみます。微小領域は高さ dy、幅 b なので dA = b dy、y の範囲は −h/2 ~ h/2 です。

Iz = ∫−h/2h/2 y² × b dy = b × [ y³/3 ]−h/2h/2 = b h³ / 12

長方形断面の断面二次モーメント bh³/12
長方形断面の断面二次モーメント I = b h³ / 12(高さ h の3乗に比例)

ポイントは、I は高さ h の3乗に比例することです。同じ面積の長方形でも、高さが大きい方向に曲げるほうが圧倒的に曲がりにくくなります。

4. 演習問題1:30 cmものさしを「薄い向き」に曲げる

条件:30 cmものさし(鉄、E=200 GPa、断面 30 mm × 2 mm)の片方を壁に固定し、先端に F=10 N の荷重を与える。長さ L=300 mm。薄い面(厚さ2 mm)に荷重を作用させる向きでの先端たわみを求めましょう。

断面二次モーメント I(薄い向き)

曲げる方向に対して、幅 b = 30 mm、高さ h = 2 mm(曲げ方向が薄いので h が小さい)。

I = b h³ / 12 = 30 × 2³ / 12 = 20 mm⁴

たわみ u

前回求めた片持ち梁先端のたわみ公式 u = FL³ / (3EI) に代入します。

u = ( 10 × 300³ ) / ( 3 × 200,000 × 20 ) = 2.7×10⁸ / 1.2×10⁷ ≒ 22.5 mm

演習問題1の答え たわみ22.5mm
演習問題1の答え:薄い向き(h=2 mm)に曲げると、たわみは22.5 mmと大きい

5. 演習問題2:同じものさしを「厚い向き」に曲げる

条件:問題1と同じ30 cmものさしの曲げ方向を90°変更して、厚い向きに曲げる(厚さ30 mmの方向に荷重を作用)。他の条件は同じ。先端たわみを求めましょう。

断面二次モーメント I(厚い向き)

曲げる方向に対して、幅 b = 2 mm、高さ h = 30 mm(曲げ方向が厚いので h が大きい)。

I = b h³ / 12 = 2 × 30³ / 12 = 4,500 mm⁴

たわみ u

u = ( 10 × 300³ ) / ( 3 × 200,000 × 4,500 ) ≒ 0.1 mm

演習問題2の答え たわみ0.1mm
演習問題2の答え:厚い向き(h=30 mm)に曲げると、たわみは0.1 mmとほぼ動かない

6. 結果の比較:向きを変えるだけで225倍の差

同じものさし、同じ材料、同じ長さ、同じ荷重なのに、向きが違うだけで結果はこれだけ変わります。

問題1(薄い向き)問題2(厚い向き)
高さ h2 mm30 mm
断面二次モーメント I20 mm⁴4,500 mm⁴(225倍
先端たわみ u22.5 mm0.1 mm(1/225
演習問題1と2の比較 225倍の差
同じものさしでも、向きを変えると I は225倍、たわみは1/225になる = I は h の3乗に効くため

高さ h の比は 30/2=15、その3乗で 15³=3,375 ……ではなく、I は h³/12 に b も掛かるので、b の比 (2/30) も入れて 3,375 × (2/30) = 225。形は同じでも、「曲げ方向の高さ h」が3乗で効くのがポイントです。
身近な例だと、I型鋼や本棚の棚板を立てて使う設計などは、この性質を最大限活用したものです。

まとめ

  • 断面二次モーメント I は断面形状で決まる量で、たわみ式 d²y/dx²=M/(EI) の分母に入る。
  • 一般式は I = ∫ y² dA(図心まわりに、断面全体を積分)。
  • 長方形断面の公式は I = b h³ / 12曲げ方向の高さ h の3乗で効くのが最大の特徴。
  • 断面 30 mm × 2 mmのものさしを薄い向きと厚い向きで曲げると、I は225倍、たわみは1/225になる。
  • 「同じ部材でも向きを変えれば曲げにくさが大きく変わる」ことを定量的に表すのが断面二次モーメント。

このチャンネルでは、材料力学を学んだり生活に役立てるための様々なコンテンツを用意しています。Youtubeではさらに詳しく解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。

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