応力集中部の応力を有限要素法(FEM)で評価するときの要素分割の影響を調べよう!
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FEM(有限要素法)で応力計算をするとき、穴・切り欠き・R部などの応力集中部では、要素分割が計算結果にどのように影響するでしょうか?この記事では、穴のある板を例題に、粗密な要素分割を比較して応力への影響を説明します。また、以前の動画で扱った応力特異場との違いもまとめます。
この記事はYoutube動画で紹介した内容の概要です。詳細は動画をご覧ください。
1. 応力集中とは
板に穴があると、穴の近傍で局所的に応力が大きくなる「応力集中」が生じます。穴から遠い位置での応力(公称応力)を σn とすると、穴表面に生じる最大応力 σmax は σmax = α × σn と表されます。α は応力集中係数と呼ばれ、形状によって決まる無次元数です。十分大きい板に円形の穴がある場合、α = 3 となります。応力集中は穴だけでなく、切り欠きや角部に設けたR部など、曲線で構成される箇所に多く発生します。

2. 今回の例題
1辺 200 mm・厚さ 20 mm の板の中央に直径 10 mm の穴があり、この板を上下方向に 10 MPa で引張ります。形状と荷重がx・y・z方向すべてに対称なので、板全体の 1/8 だけをモデル化し、各対称面に対称境界条件(それぞれの方向変位を拘束)を設定します。これにより、計算精度を落とさずに計算コストを大幅に削減できます。

3. 5段階の要素分割で比較する
穴周辺の要素分割を5段階(①細かい〜⑤粗い)変えて計算し、結果を比較します。①②では穴の表面が滑らかに表現されますが、③まで粗くなると表面に少し凸凹が生じます。④⑤まで粗くなると穴の形が円ではなくなります。要素分割が粗すぎると、解析したい形状そのものを正確に表現できなくなります。

4. 細かい分割では最大応力が収束する
要素分割①②③の結果を比較すると、最大応力はそれぞれ 31.9 MPa・32.4 MPa・32.4 MPa と、ほぼ同じ値に収束しています。応力分布の形も③まではほぼ同じです。応力集中部は最大応力の理論値が有限な値であるため、要素分割を細かくするにつれて計算値が真の値に収束します。これは、細かくしても収束しない応力特異場とは大きく異なる点です。

5. 粗すぎると形状も応力もデタラメになる
5条件すべての結果を比較すると、粗い要素分割④⑤では最大応力がそれぞれ 34.0 MPa・23.2 MPa となり、①②③とは異なります。応力分布の形も④⑤では大きく異なります。これは穴の形状を正確に表現できていないためであり、要素分割が粗すぎると解析の意味が失われます。

6. 応力特異場と応力集中部の違い
応力特異場と応力集中部では、要素分割の影響が異なります。形状の面では、応力特異場は鋭角・直線が多いので粗い分割でも形状を表現しやすいですが、応力集中部は曲線が多いので粗い分割では形状精度が落ちます。応力の面では、応力特異場では特異点の理論値が∞のため細かく分割しても最大応力は収束しませんが、応力集中部は最大値が有限なので細かく分割すれば収束します。

まとめ

- 板の穴・切り欠き・角部のR部などの近傍で応力が急激に大きくなる現象を「応力集中」という。最大応力は σmax = α σn(αは応力集中係数)で表される。円形穴では α = 3。
- 応力集中部は曲線で構成されることが多く、要素分割が粗いと形状を正確に表現できない。穴や切り欠きの形状が崩れた状態では計算の意味が失われる。
- 応力集中部の最大応力は有限な値であるため、要素分割を細かくすれば最大応力は収束する。細かくしても収束しない応力特異場とは根本的に異なる。
- 解析対象が応力特異場か応力集中部かを見極めて、それぞれに適した要素分割と評価方法を選ぶことが重要。
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